給与から天引きされているのに年金記録がない? ― 自分の年金を守るためには ―
2025.08.01コラム

厚生年金の「記録漏れ」――あまり聞き慣れない言葉かもしれませんが、実は誰にでも起こりうる問題です。
たとえば、現在あるいは過去に会社勤めをしていた時期、毎月の給料から厚生年金保険料がしっかり天引きされているにもかかわらず、会社が保険料を納付していない――そんなケースが実際に発生しています。
厚生労働省が2025年7月22日に発表した報告によると、こうした「保険料は天引きされていたが、会社が納付していなかった」という事例は、過去10年ほどの間で13万件以上にのぼり、その中で国が保険料を立て替えた件数も約9,800件、総額は40億円超に上ります。
(参考)厚生労働省「厚生年金保険の保険給付及び保険料の納付の特例等に関する法律の施行状況に関する報告(第35回)」
年金記録の「漏れ」に気づくにはどうすればいい?
このような事態が起きても、本人が気づいて請求手続きを行わない限り、年金記録が訂正されることはありません。では、どうすれば気づくことができるのでしょうか?
まずは、次の2つの手段を使って、自分の年金記録を定期的に確認することが大切です。
「ねんきん定期便」を確認する
毎年、誕生月に送られてくる「ねんきん定期便」には、これまでの加入履歴や納付状況が記載されています。
「この年は確かに働いていたのに、記録が載っていない」「納付額が少ない気がする」といった違和感がないかチェックしましょう。
「ねんきんネット」でオンライン確認
日本年金機構が運営する「ねんきんネット」に登録すると、いつでも自分の年金記録を確認できます。紙の定期便よりも詳しい情報が見られるので、過去の勤務先ごとに納付記録が反映されているか確認してみましょう。
おかしいと思ったら、どうすればいい?
もし「記録が抜けているのでは?」「記録上の給与が低すぎる?」などと思った場合は、会社のミスや不正が考えられますので、年金事務所に相談しましょう。必要に応じて請求手続きの案内をしてくれます。
確認の際は、以下のような書類があるとスムーズです。
- 年金手帳
- 勤務先の給与明細
- 源泉徴収票
- 勤務先の辞令/当時の履歴書 など
すでに会社が無くなっている場合でも、関連資料や周辺事情に基づいて、記録訂正が行われることがあります。記録が訂正されれば、法律に基づいて、本来受け取れるはずだった年金額が復元されます。
最後に:自分の年金は自分で守ろう
年金制度は、自分の老後を支える大切な仕組みですが、このようなミスや不正があれば、将来の受給額に大きな差が出てしまいます。信じられない話かもしれませんが、「払っていたはずの厚生年金が、記録に残っていなかった」というケースは、実際に起きているのです。
不備に気づくためにも、「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で定期的に確認する習慣をつけましょう。そして、おかしいと思ったら遠慮せずに相談を。
自分の年金を守るために、今できることを始めてみませんか?
参考サイト:日本年金機構「届出もれや誤りをなくしましょう。」